2007.4.21
岡山大学医学部にて
弁理士 朝日奈宗太
目次
1 発明と特許
2 特許情報の調査
3 出願書類の書き方
4 出願から登録まで
5 特許権の効力
6 特許侵害に係わる損害賠償
7 特許出願動向
8 生物関連発明
9 バイオ・医療分野の発明
10 米国の治療方法クレーム
1発明と特許
1-1 特許制度とは
1-2 発明って何だろう
1-3 特許になる発明とは?
1-4 特許を受けることができる者
1-5 職務発明制度(相当の対価)
1-1特許制度とは?
特許制度は、発明者の研究成果(発明)を保護する(独占権)とともに、優れた技術知識を世の中に広く公開して、
技術の進歩、産業の発達に役立たせることを目的としています。
1-2発明って何だろう
では、発明ってどんなものをいうのでしょうか。
特許法では「発明」を、
「・自然法則を利用した
・技術的思想の
・創作のうち
・高度のもの」と定義しています。
『自然法則の利用』
「自然法則」とは・・・
「自然法則」とは自然界において経験によって見出される科学的な法則をいいます。
したがって、ゲームのルールや商売方法のように「自然法則」でないものや、エネルギー保存の法則に反する永久機関などは、
特許法上の「発明」になりません。
『自然法則の利用』でないもの
@自然法則でないもの
例:計算方法・遊戯方法・経済法則
A自然法則に反するもの
例:永久機関
B自然法則自体
例:万有引力の法則
『技術的思想』
「技術」とは一定の目的を達成するための具体的手段をいい、だれがやっても同じ結果を得るものでなければなりません。
また、単なる情報の提示や単なる美的創作物は技術的思想に該当しません。
『技術的思想』でないもの
例:フォークボールの投球方法
例:絵画、彫刻
例:データベース
『創作』、『高度』
「創作」とは、新しいことを創り出すことをいいますので、「発見」とは区別されます。
したがって、天然物の単なる発見などは、特許法上の「発明」になりません。
発明は、自然法則を利用した技術的思想の創作であっても、「高度」なものでなければなりません。
この要件は、実用新案登録の対象である「考案」が、必ずしも「高度」でなくてもよいというのと対照的です。
『創作』でないもの
例:ベンゼン環の構造の解明
例:エックス線の発見
1-3特許になる発明とは?

産業として実施できるか
特許を受けることができる「発明」であるためには、まず第一に、産業として実施できなければなりません。
これは、ただ単に学術的・実験的にしか利用できない発明は「産業の発達」を図るという特許法上の目的が達成できず、
保護する価値がないからです。
産業とは?
特許法における「産業」とは、工業、鉱業、農業などの生産業だけでなく、運輸業などの生産を伴わない産業や、
保険業、金融業などのサービス業も含めた広い意味での産業を意味します。
産業として実施できるものに該当しないもの
実際上、明らかに実施できないもの
例:地球をプラスチックフィルムで覆う
個人的にのみ利用され、市販などの可能性のないもの
例:猫舌向けのお茶の飲み方
ヒトを手術・治療・診断する方法(人道上、広く開放すべきだから)
手術:外科的手術方法、採血方法
治療:投薬・注射方法、虫歯の予防法、指圧法
診断:心電図をとるための電極の配置方法
新しいかどうか
特許を受けることができる「発明」は、今までにない「新しいもの」でなければなりません。
すでに誰もが知っているような発明に特許権という独占権を与えることは、社会にとって百害あって一利もないからです。
新しさがないとして特許されない発明
@特許出願前に公然と知られた発明
例:テレビで放映
A特許出願前に公然と実施された発明
例:店で販売
B特許出願前に書籍に掲載された発明やインターネットで公表された発明
例:研究論文で発表、ウェブで公開
例外的に救済を受けられる場合
「新しさ(新規性)」を失った発明全てを特許できないとすると、むしろ産業の発展をさまたげる場合や、
発明者に対し厳しすぎると思われる場合があるため、一定の条件を満たす場合には、特許を受ける権利を有する者の出願は、
その新規性を失わないものとみなす例外的な救済(これを「新規性喪失の例外」といいます。)が受けられます。
新規性喪失の例外の対象となる場合
特許を受ける権利を有する者(発明者)の行為
@発明完成後の試験
A刊行物に発表
B電気通信回線(インターネットなど)を通じて発表
C特許庁長官が指定する学術団体(大学や学会などが申請により指定可能)の研究集会での文書やスライド、
パワーポイントでの発表
D特許庁長官が指定する博覧会への出品
第三者の行為
発明者の意に反する場合
特別な手続が必要
例外的な救済を受けるためには、新規性を失うに至った日から6ヵ月以内に例外規定の適用を受けたい旨の書面
とともに特許出願をしなければならないほか(30条適用出願)、新規性を失った事実を証明する書面を特許出願の日から
30日以内に提出しなければなりません。

しかし、例えば展覧会に出品するなどの行為により新規性を失い、その後たとえ例外規定の要件を満たした出願をしても、
その出願前に他人が出品した発明について出願してしまうと、他人の出願よりも後であるとして特許は受けられませんので
注意しましょう。(他人の出願にも新規性がありませんから、その他人の出願も特許を受けられません。)

また、この規定は日本独自のものですので、このような例外規定のない欧州などでは特許権を取得することはできません。
つまり、例外規定にかかわらず、発表前に出願することが重要です。
容易に考え出すことができないか
新規な発明であっても、従来技術をほんの少し改良しただけの発明のように、誰でも簡単に考えつく発明については、
特許を受けることができません。簡単に考え出された発明でも特許権が認められるようになると、
日常的に行なわれている技術的な改良についても次々出願しないと別の人に特許をとられてしまいかねず、支障がでるからです。
進歩性がないとされるもの
@公然と知られた発明や公然と実施された発明を単に寄せ集めたに過ぎない発明
例:公然と知られたナイフやハサミ → 多機能つきナイフ
A発明の構成要素の一部を置き換えたに過ぎない発明
例:椅子の移動をスムーズに → 机の移動をスムーズにするキャスターするキャスター
Bヒト以外の動物用医薬からのヒト用医薬への転用
例:動物用抗炎症剤 → ヒト用抗炎症剤
1-4特許を受けることができる者
ここまで特許を受けることができる発明について学んできました。では、特許を受けることができる者は、
誰なのでしょうか。発明は、発明を創造した個人の能力と努力に基づく知的創造の成果です。この新たに創造された
成果に関する権利については、発明した人がもっているものと特許法では示しています。
「発明者」
特許を受ける権利は、発明の完成により発生しますので、「発明者」にあります。
この権利は、発明を完成した人なら未成年者でもあります。「発明」は、人間個人の頭脳によって産み出されるものですから、
「発明者」は必ず自然人である「人」に限られ、「会社」などの法人はなり得ません。
共同で発明をしたときには、特許を受ける権利は共同発明者全員の共有となります。
また、職務発明の場合であっても従業者が原則として特許を受ける権利を有します。
「承継人」
発明者は、この特許を受ける権利を他人に譲り渡すことができます。発明者から権利を譲り受けたり相続した人のことを
「承継人」といいます。したがって、法人も特許を受ける権利を発明者から譲り受け、「出願人」として出願することができます。
特許を出願するための資格
出願をするためには、法律上の権利義務の主体となる資格が必要です。これを「権利能力」といい、
「自然人」である「人」に認められているほか、法律上「人」としての地位を認められた「法人」にも認められています。
また、権利能力は、日本人のほか、日本国内に住所または居所(法人にあっては営業所)を有する外国人には権利能力があります。
1-5職務発明制度(相当の対価)
従業員の発明は、使用者の業務の関係と従業員の職務の関係によって、職務発明、業務発明、自由発明の3つに大別され、
それによって従業員の権利も変わっていきます。
職務発明 → 会社の業務範囲に属し、発明をするに至った行為が従業員の現在または過去の職務に属する発明
業務発明 → 会社の業務範囲に属し、職務発明でない発明
自由発明 → 会社の業務範囲に属しない発明
職務発明とは?
会社に勤める従業員が、会社の仕事として研究・開発した結果完成した発明を「職務発明」といいます。
この「職務発明」は、従業員自身の努力と才能によって生み出されたものではありますが、使用者である会社も、
給料、設備、研究費などを従業員に提供しているので、発明の完成に貢献しているといえます。
そこで、特許法では、使用者である会社の貢献度を考慮して、発明の実施や予約承継についての補償的権利を会社に与えています。
職務発明制度の趣旨
使用者等が研究開発投資を積極的に行ない得るよう安定した環境を提供するとともに、従業者等が使用者等によって
適切に評価され、報いられることを保障することにより、発明のインセンティブを喚起しようとするもの
使用者:特許を受ける権利の予約承継
通常実施権
従業者:「相当の対価」支払い請求権 → 使用者と従業者との利益調整
(使用者への権利承継の代償)
しかし、知的財産に対する意識の高まりと共に、発明者が、訴訟を起すケースが年々増加
発明者の相当の対価に関する最近の判決

数年前までは、数百万〜1千万程度の判決が主流でしたが、平成16年に入り、1億を超える高額の判決が多く見られる
ようになっています。
改正前の職務発明の規定の問題点
使用者:研究開発投資活動への不安定性の増大
相当の対価の不透明性(算定基準)など
従業者:適正な評価がなされているという納得感がない、在職中の提訴の困難性
改正後の職務発明の規定の要点
<原則>
職務発明に係る「相当の対価」を使用者等と従業者等の間の「自主的な取決め」にゆだねる
・権利承継時の対価の決定が不合理でなければ、それを尊重すべき
・不合理な場合、従業者に「相当の対価」を請求する権利を認める
・不合理かどうかの判断においては、対価決定の手続面を重視
2 特許情報の調査
2-1 特許情報ってどんなもの
2-2 特許情報にアクセスしよう
2-1特許情報ってどんなもの

特許情報の種類
・公開特許公報
・特許公報
・公表特許公報
・公開特許英文抄録
・公開特許出願抄録
・・・などなど。

特許情報の役割
@重複する研究開発の防止
・既存技術を活用した
・研究開発の推進
A無駄な出願の防止
B紛争の防止
C他社からの技術導入、技術提携の検討
技術情報としての特徴1
最先端技術の開発指標
特許は、企業、大学、研究所などで研究開発された最新技術が、明細書という書類にまとめられ、
特許庁に出願されます。この特許出願された技術内容は、出願日から1年6カ月を経過しますと「公開特許公報」に掲載され、
一般に公開され、最新の技術やその動向をすばやく把握することができます。
技術情報としての特徴2
豊富な技術情報の宝庫
公開特許公報に記載されている技術説明には、実施可能な程度まで技術内容を記載することが義務づけられています。
この特許情報にアクセスするだけで、いろいろな技術を知ることができます。特許情報には過去の情報も蓄積されていますので、
過去に遡って知ることができます。
技術情報としての特徴3
体系的な技術情報
これらの特許情報は、世界共通の記載形式により、世界的に標準化されたフロントページ
(書誌的事項、発明の内容を簡潔にまとめた要約および図面)、特許請求の範囲、発明の詳細な説明および図面が、
記載されています。このため、外国で発行された特許情報であっても、その内容を容易に理解することができます。
権利情報としての側面
特許庁の審査を経て特許として認められると「特許公報」が発行されます。この特許公報によって特許権という
独占権の認められる範囲を知ることができます。
検索しやすい情報体制
特許情報(公報類)には、権利としての範囲や技術内容ばかりでなく、いつ誰が発明したかなどの様々な情報が
豊富に記載されています。
とくに特許情報は、電子化してインターネットで特許電子図書館として公開されています。
特許電子図書館では、審査官が利用しているものと同じ検索ツール、例えば国際特許分類(IPC)やFタームなどが
使えます。
2−2 特許情報にアクセスしよう

特許電子図書館(IPDL)
特許庁では平成8年よりホームページを開設しており、インターネットを通じて無料の情報提供サービスを行なっています。
約5550万件の産業財産権情報(特許・実用新案・意匠・商標・審決の公報類および関連情報)とその検索サービスを提供
する特許電子図書館(IPDL;平成11年3月創設)は、平成13年に独立行政法人
(平成16年より(独)工業所有権情報・研修館)に移管され、サービス内容の充実・拡大がなされています。
特許電子図書館(IPDL)
1)特許・実用新案公報データベース
2)公開特許公報フロントページ検索
3)公報テキスト検索
4)特許分類検索
5)パテントマップガイダンス
6)外国公報データベース(アメリカ、EPO、イギリス、ドイツ、フランス、スイス、WIPOおよびカナダ)
7)米国特許分類検索
8)審査書類情報照会
1)特許・実用新案公報データベース
特許・実用新案公報の各種公報を、公報番号で照会することができます。平成5年以降の公開・登録公報などは
「テキスト+図面」で表示することができます。
2)公開特許公報フロントページ検索
このサービスでは、平成5年1月以降の公開特許公報フロントページ(書誌的事項、要約、代表図面を掲載)に、
リーガルステータス(手続の経過情報)を加えた情報を提供しています。検索キーワードなどを使って目的公報を探す
ことができます。
3)公報テキスト検索
平成5年1月以降発行のCD−ROM公報の全文データを提供しています。「公報種別」、「検索項目選択」、
「検索キーワード」、「検索方式」を指定することにより、目的公報を探すことができます。
4)特許分類検索
特許庁の審査官が使用している国際特許分類(IPC)、FタームやFIなどの検索ツールを利用して
特許・実用新案の各種公報を検索することができます。予めパテントマップガイダンスで、技術テーマやFタームリストを
調べておくのがサーチのコツです。
5)パテントマップガイダンス
FタームやFI、IPC(国際特許分類)を参照することができます。関連する特許公報を打ち出し、
そこに掲載されている国際特許分類をメモしてから詳細を調べるのがコツです。
6)外国公報データベース
各国の特許文献を文献番号で照会することができます。現在利用できるのは、アメリカ、EPO、イギリス、
ドイツ、フランス、スイス、WIPOおよびカナダです。
7)米国特許分類検索
米国特許明細書を米国特許分類で検索することができます。
8)審査書類情報
2003年(平成15年)7月以降に、特許庁から出願人に発送された書類を文献番号から参照することができます。
3 出願書類の書き方
3-1特許出願の手続き
3-2出願書類を揃えてみよう
3-3特許請求の範囲の例
3-4明細書の記載要件
3-1特許出願の手続き
日本では、発明をしただけでは特許を受けることができません。特許を受けるためにはまず特許庁に出願する必要があります。
特許出願
出願書類の作成
↓
パソコンによるオンライン出願
↓
願番通知(特許庁に係属)
特許出願に必要な書類
特許出願には、「願書」、「特許請求の範囲」、「明細書」、「図面」および「要約書」の5つの書類が各1通必要です。

3-2出願書類を揃えてみよう
「願書」
願書は出願書類の顔にあたるものです。発明者や出願人の氏名などを記載して、発明者や出願人を特定します。


特許請求の範囲
特許請求の範囲は、審査対象であり、それが特許になったときには権利書としての役割をもっています。

明細書
出願明細書は、特許請求の範囲に記載した審査対象の特定と、第三者に発明の内容を開示する技術文献としての
役割をもっています。


図面
発明の実施の形態、もしくは実施例の構造や動作を具体的に図面により表現するものです。

要約書
技術的に正確かつ簡明に発明の概要を表します。特許請求の範囲と異なり権利の範囲を定めるものではありませんので、
技術的に分かりやすく記載することが望まれます。

3-3特許請求の範囲の例

特許請求の範囲の表現態様
@数値限定クレーム
AProduct by Processクレーム
B用途限定クレーム
CMarkushクレーム
D性質機能表現(パラメータ)クレーム
EJepsonクレーム
F除くクレーム
@数値限定クレーム
【請求項1】 重合度250〜500、ケン化度88〜90モル%を有するポリビニルアルコール
数値限定クレームとは、下線部にしめすような数値範囲の限定を付した特許請求範囲形式のことをいう。
また、単なる数値限定だけでなく、材料を構成する物質の物性、さらには材料そのものを特殊な測定方法によって測定し、
その結果に基づくパラメータによる限定を付した、いわゆるパラメータクレームも含まれる。
数値限定クレームの注意点
数値限定クレームでは、数値限定が臨界的意味を持つことを明細書中で明らかにすることが必要である。
もし数値限定の臨界的意味が明らかにされていなければ、数値限定がされていないのと同様に扱われてしまう。
AProduct by Processクレーム
【請求項1】 製法Aにより製造した化合物B
【請求項2】 請求項1で得られた化合物を有機溶媒で処理して得られた物質
プロダクト(とくに物質)をクレームする場合、通常、構造式や物性などで当該プロダクトを特定するが、
これらによる特定が難しい場合に、プロダクトをプロセス(製造法)により特定することが許されている。
Product by
Processクレームの注意点1
Product by Processクレームでは当業者にとってプロセスの内容がわかるように記載しなければならない。
(発明の詳細な説明に処理の具体的方法を記載することが必要。)
Product by
Processクレームの注意点2
クレームでは絶対的な新規性が要求される。同一プロダクトが別異のプロセスで製造されることが公知である場合は、
新規性なしとして拒絶される。
B用途限定クレーム
【請求項1】 DDTを有効成分とする殺虫剤。
【請求項2】 DDTを虫にふりかけて殺虫する方法。
用途限定クレームとは、クレーム中に用途限定の表現形式を有する記載形式をいう。
物の発明では、その物の特定の性質を専ら利用する発明が、方法の発明では、その物を使用する方法が用途発明に該当する。
用途限定 クレームの注意点
DDT(p,p’-ジクロロジフェニルトリクロロエタン)という<もの(化合物)>自体が公知であっても、
その<もの>の特定の性質の<発見>に基づいて、その<もの>を特定の目的に利用するという創作的要素が付加されているので、
特許される。
CMarkushクレーム
【請求項1】 メチル基、エチル基およびプロピル基よりなる群から選択された置換基を有する化合物X。
化学関係の発明において、しばしば用いられるクレームの記載形式である。用いられる物質が複数個あって、
しかもそれらを総括的に表現する用語がないときに、「A、BおよびCよりなる群から選ばれたメンバー」という表現で用いられる。Markushクレームの注意点1
これらの択一的要件を総括的に表現する用語が存在するときには、その用語を用いて特定するほうが無難である。
たとえば、前記の例では「メチル基、エチル基およびプロピル基よりなる群から選択された置換基」を「C1〜3のアルキル基」
と表現することが好ましい。
Markushクレームの注意点2
このクレームの記載が許されるのには、そのマーカッシュの各メンバーが、互いに密接した関係にあること
(たとえば、広く認められている物理的または化学的性質が同じ分類に属するか、クレームされた関係においての機能を
果たすため少なくとも一つの共通した性質を有していることなど)が条件となる。
D性質機能表現クレーム
【請求項1】 X研究所試験法にしたがって特定溶媒中で10分間煮沸させたときの重量減少比が5%以下である
成分を含む接着剤組成物。
【請求項1】 滑りにくい取っ手を有する容器。
物の発明では、通常、物の結合や構造で発明を特定するが、性質機能表現クレームでは、作用、機能、性質、特性、方法、
用途などで、方法の発明では、方法の結合、動作に使用する物、使用目的などを用いて特定する。
性質機能表現クレームの注意点
特許請求の範囲において性質や機能的な内容で発明を特定する場合には、発明の内容がとくに曖昧となりやすいので、
充分に注意が必要である。そして、このような表現の内容が不明確とされないように【発明の詳細な説明】の中で、
性質や機能の内容を充分に説明する。
EJepsonクレーム
【請求項1】 操縦手段A、切断手段B、回転手段C、穿孔手段D、製粉手段Eからなる装置において、
操縦手段Aが、B、C、DおよびEの個々の動作を同期するように改良されている装置。
複数の発明特定事項のうち一部が公知である場合に、そのような公知部分をクレームの前文(preamble)
「〜において」に入れ、新たな発明特定事項をクレームの本文に書いて組み合わせるクレームの記載形式をいう。
Jepsonクレームの注意点
ドイツでは、通常この型のクレームが採用されているが、アメリカではJepsonクレームは比較的マレにしか採用されていない。
F除くクレーム
【請求項1】 アルキル基(エチル基を除く)を有する化合物X。
除くクレームとは、審査において示された先行技術に記載された発明を除外し、両発明の相違点を明確にすることを
目的として使用するクレームの記載形式をいう。したがって、出願当初から使用することは、通常ない。
除くクレームの注意点
除くクレームが認められているからといって、特許されるかどうかは別問題である。
除くクレームによって先行技術に対する新規性は満足するので、進歩性が認められれば特許されることになる。
3-4明細書の記載要件
特許を受けようとする発明について、明細書には、その発明の属する分野における通常の知識を有するものが
その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載しなければならない。=実施可能性要件
明細書 〜記載内容@〜
明細書では‥
特許を受けようとする発明は、明細書中に記載されたものであることが要件とされているので、
請求の範囲に記載された内容がすべて記載されていることが重要である!
さらに、将来、審査官からの拒絶理由に対応するため、意見書、補正書での主張の要点になる可能性が高いので、
確認できた範囲内および充分に推測できる範囲内でしっかり記載しておくべきである。
とくに!
補正は、審査官の拒絶理由に対抗する重要な手段のひとつですが、出願当初に記載されていない新規事項を追加する
補正はできないので、充分に発明の内容を記載しておくことが重要!!
4 出願から登録まで
4-1出願から特許取得までの流れ
4-2方式審査
4-3出願審査請求
4-4実体審査
4-5最終処分
4-1出願から特許取得までの流れ
特許は出願しただけでは権利を取得することができません。出願すると、方式審査がなされ、
出願から3年以内に出願審査請求をすると実体審査が行われます。
実体審査の結果、特許の要件を満たしていると判断されると特許査定がなされ、原簿に登録されて特許権が成立します。
特許の要件を満たしていないものは拒絶されます。
出願から特許取得までの流れ

4-2方式審査
方式審査とは、願書や明細書などの出願書類が特許法で定める手続的および形式的な要件を備えているか
どうかを審査することをいい、特許出願された全てについて審査され、特許すべきかどうかの審査である「実体審査」
と区別されます。
補正命令
方式審査で出願書類に不備があると、特許庁長官名で出願書類の不備を補正するよう手続補正指令書が送付されます。
手続補正指令書で指定された期間(通常は30日以内)に補正書を提出して、不備を訂正します。
期間内に補正をしないと、特許出願が却下処分にされて、初めから特許庁に出願されなかったものとみなされます。
弁明書の提出
願書に明細書が添付されていないとか、提出された出願書類が特許出願か実用新案登録出願か分からないなど、
出願に重要な欠点がある場合には、手続補正が命じられないで、却下処分がなされてしまいます。
ただし、却下の前に弁明書提出の機会が与えられます。

4-3出願審査請求
特許出願した発明が特許になるかどうかは、特許庁の審査官による実体審査を経て判断されます。
この実体審査の手続に入るためには、出願日から3年以内に「出願審査請求書」を提出しなければなりません。
3年以内に出願審査請求がなされなかった出願は、取り下げられたものとみなされますので、注意が必要です。
4-4実体審査
方式審査をクリアした出願で、出願審査請求がなされた出願は、審査官によって特許になるかどうかの実質的な審査が行われます。
この実体審査は、特許庁の審査官が「特許を受けることができる発明」の条件を満たしているかどうか、
拒絶理由がないかどうかを調べます。

拒絶理由の通知
審査官が拒絶理由を発見した場合、すなわち特許できないと判断した場合は、そのまま最終決定である
「拒絶査定」をするのではなく、まず出願人に拒絶理由通知書を送り意見を聴きます。
拒絶理由を通知されると、指定期間内に意見を述べることができますから、あきらめずに意見書と必要ならば
補正書を提出して対処します。
この対処を怠るとほとんどの場合、拒絶の査定がなされてしまいます。
4-5最終処分
実体審査は審査官の査定によって終了します。この最終処分となる査定は、特許権を付与するかどうかの決定のことをいい、
特許権が付与される特許査定と、特許権が付与されない拒絶査定の2種類があります。
特許査定
・拒絶理由が発見できなかった場合
・拒絶理由を発見したが、出願人側からの意見書ないし補正書により拒絶理由が解消したと認められる場合
拒絶査定
・拒絶理由に対する出願人の意見書ないし補正書によっては、拒絶理由が解消していないと認めるとき
・出願人側から意見書などが提出されない場合であって、拒絶理由を撤回する必要がないと認めるとき
特許権の成立
特許権は、審査官の特許査定がなされただけでは権利が発生しません。所定の特許料が納付された後、
特許庁長官による特許登録原簿への特許権設定の登録がなされて、はじめて権利が発生します。
なお、特許権の存続期間は出願から20年で満了します。
5 特許権の効力
5-1特許権の効力
5-2特許権の効力の及ばない範囲
5-3特許権の消尽
5-1特許権の効力
特許権は、独占的排他権であり、特許権者は、その特許発明を独占的に実施する強力な権利をもちます。
もし、第三者が正当な権原なく業としてその特許発明を実施すれば、その行為は特許権の侵害となります。
ただし、試験または研究のためにする特許発明の実施は、侵害行為になりません。
5-2特許権の効力の及ばない範囲
試験または研究のためにする特許発明の実施
試験または研究の「ためにする」は、試験または研究「としてする」の意味です。
試験または研究のために用いる試験器具などの発明の業としての実施は効力範囲外となるでしょう。
試験または研究に、該当するもの
@進歩性などの特許性調査のための試験研究
A実施可能かなどの機能調査のための試験研究
B発明の改良・発展を目的とする試験研究
C医薬品の製造承認をうるための試験研究(薬事法、農薬取締法)
該当しないもの
@特許権者に無断で繁殖させた実験用マウスを用いて行う新薬の開発のための研究
A販売可能性などの経済性調査のための試験研究
5-3特許権の消尽
特許製品がたとえば適法に販売された後は、その製品については、特許権は使い尽くされたものとなり、
もはや同一物(製品)には、特許権の効力は及ばないとする考え方を、「消尽」という。

インクカートリッジ事件
知財高裁 2006年1月31日 原告:キャノン 被告:リサイクル・アシスト
使用済みの特許製品(インクジェット・プリンター用のインクカートリッジ)の再生に関連する特許侵害訴訟
・使用済みの特許製品が廃棄、回収され、再生品として再度流通した。
・使用者が使用済み品を回収に出した時点で特許製品の取引は終了している。
・純正品と競合する再生品の自由な流通を認めると、特許権者の独占的利益の源泉を失わせることになる。
・許諾を得ないで使用済みの特許製品を再生させて製品化する行為は「生産」に該当(製品化した物の販売は特許権の侵害)。
6 特許権に係わる損害賠償請求
6-1日本企業の米国での特許侵害例
6-2日本における知的財産権関連の損害賠償
6-1日本企業の米国での特許侵害例
1.ハネウエルVSミノルタ
ハネウエル社は、ミノルタカメラの主力製品である自動焦点一眼レフ・カメラおよび全自動コンパクトカメラが
特許権を侵害するとして、1987年4月にニュージャージー連邦地裁へ訴訟。評決が出たのちに和解が成立
(1992年3月)。
和解金:12,750万ドル
2.テキサス・インスツルメンツVS日本企業8社
米国の半導体メーカーのテキサス・インスツルメンツ社は、DRAMの製法特許無断使用を理由に、
日本企業8社を1986年1月ダラス連邦地裁へ提訴。87年中に8社は、TI社の特許を認めて過去および
将来のロイヤリティの支払いに同意する内容で和解に応じた。
和解金:19,000万ドル
3.コイルVSセガ・エンタープライゼズ
米国の個人発明家コイル氏は、セガ・エンタープライゼズのビデオ・ゲームの背景用の画像システムが、
特許権を侵害するとして1990年ロサンゼルス連邦地裁に提訴。評決がセガの行為を故意だとみなしたこともあり、
和解に応じた(1992年5月)。
和解金:4,300万ドル
6-2日本における知的財産権関連の損害賠償
昭和45年5月東京地裁 原告:本田技研工業 被告:鈴木自動車
意匠:オートバイのデザイン
賠償金:7.6億円
平成9年2月富山地裁
原告:キッセイ薬品工業 被告:ワイ・アイ・シー(他13名)
特許:抗アレルギー剤の製造方法
賠償金:11億円
平成10年10月東京地裁
原告:スミスクラインビーチャム(英国)
被告:藤本製薬
特許:潰瘍治療剤シメチジンの製造方法
賠償金:30億円
7 特許出願動向
7-1内外国人別出願動向
7-2大学別出願動向
7-3企業別PCT出願動向
7-4ライフサイエンス分野の技術動向
7-5審査順番待ち期間の増加
7-6早期審査および特許審査ハイウェイ
7-1内外国人別出願動向(日本)
〜1996〜2005年の出願件数〜