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米国の特許制度 |
2008.3.13
第7回 目次
17.5 米国特有の司法制度
(以上第6回)
最近のプラクティス・・・・・・
Pre? Appeal Brief Conferenceの試行プログラム
18.米国における均等論の歴史
18.1 文言侵害と均等論侵害
文言侵害
均等論
均等論の成立要件
18.2 米国における均等論の歴史
19.フェスト事件
20.禁反言の判断
21.今後の実務
22.Festo後のCAFC判決
23.クレーム解釈
24.最近の判例の紹介
@KSR事件(自明性)
AAT&T事件(幇助侵害)
Pre-Appeal Brief Conference の試行プログラム
ーUSPTO Official Gazette通達 2005-7-12によるー
(通達の公告と同時に発効)
このプログラムの目的は、出願人に、Appeal
Briefの提出に先立ち審査官の合議体により拒絶査定の法律上、
事実上の根拠を公式に見直してもらうことを請求することができる選択肢を与えるものである。
したがって、出願人は引き続きBoard of
Patent Appeals and Interferences に対する通常のアピールの手続を
用いることもできる。
Pre - Appeal Brief手続は、出願人にAppeal Brief作製のための時間と費用を節約させるために採用されるものであり、
すべてのアピールされた出願にあてはまるわけではないが、あてはまる場合は、出願人とUSPTOの両方にとって時間と費用の節減となる。
Pre - Appeal Brief手続の概要
現行のプラクティスでは審査官により2回拒絶されたクレームについて出願人はアピールを請求できる。
すなわち、出願人は所定の期間内に所定の費用を払って、Notice of appealを提出し、その2ヵ月以内に所定の費用とともに、
Appeal Briefを提出しなければならない。その期間は費用を支払うことにより延長請求することもできる。
Pre - Appeal Brief手続は、Appeal Conferenceを用いてアピールの請求があった事項の見直しをしてもらうことを
Appeal Briefの提出より前に請求できることを可能にする。
この手続の主眼点は、
@事実の誤認にもとづく明らかに不適切な拒絶があるか、
A一応の拒絶をするための必須要素が脱落しているか
を見出すことである。
*請求人
Notice of Appealを提出し、かつ経験のある審査官の合議体により、アピールの請求の対象となっている問題点について
一定期間内に詳細な見直しを希望する出願人。
*審査官の合議体による見直し
もはやAppeal Briefを提出する必要がない旨の決定をうることもできる。
このような決定は、クレーム解釈や先行技術の示唆についての判断ではなく、
明白な法律上または事実上の欠陥が存在するかどうかの判断にもとづいて決定がなされる。
現実に審査した審査官を含む合議体で拒絶の理由の是非が審理され、出願の状況(status)についての
決定が書面で出願人に通知される。
* Appeal Briefまたはその他の応答の提出時期
Notice of Appealと同時にPre - Appeal Briefの請求がされれば、 Appeal Briefの提出期限は2ヵ月か請求に
対する決定の発送日から1ヵ月のうちいずれか遅い方である。
*合議体による見直し審理
出願人がPre - Appeal Briefの請求後(決定される前に)つぎのような応答をすれば、見直し手続は終了する。
@ Appeal Briefの提出
ARCEの提出
Bfinalアクション後の補正
CAffidavitの提出
D放棄の宣言
インターフェアランスの宣言の請求も見直し手続を終了させる。
出願人はPre - Appeal Briefの請求の終了または請求の却下について速やかに通知される。
もし上記のような手続きのうちいずれかが行なわれれば、 Appeal Brief (該当する場合)の提出期限は2ヵ月か請求の決定の発送日から
1ヵ月のうちいずれか遅い方になる。
18 米国における均等論の歴史
18.1 文言侵害と均等論侵害
侵害には、文言侵害と均等論侵害がある。侵害訴訟において、侵害か非侵害かを裁判所が判断する場合、
原則として、文言上の侵害(literal Infringement)が成立するか否かがまず判断され、成立しない場合に、
ひき続いて均等論(doctrine of equivalents)のもとでの侵害が成立するか否かが判断される。
ただし、CAFCでは法律問題のみが取り扱われるため、連邦地方裁判所で文言上の侵害のみを問題にし、
均等論による侵害を主張しなかった場合、CAFCにおいてはじめて均等論を主張することはできない。
文言侵害
文言侵害( literal Infringement)とは、クレームと侵害対象物をそれぞれ構成要件に分解し、対比し、
クレームの構成要件のすべてが文理解釈上、侵害対象物に含まれる場合にのみ、侵害が成立するとの原則を指す。
換言すれば、クレームの要素の一つでも、対象物から欠けるとき、非侵害が推定される。
均等論
もし特許をクレームの文言のとおりに解釈するならば、その価値はいちじるしく減殺されてしまう。
たとえば、クレームのある要素を、本質的には差がないがクレームの文言には触れない代替物に変更することにより、
特許侵害を免れることができてしまう。
したがって、特許の範囲は文言の範囲には限られず、その均等の範囲も権利範囲に含まれる。
均等論の成立要件
オール・エレメント・ルール
まず、クレームと侵害対象物をそれぞれ構成要件に分解して対比し、侵害対象物がクレームの構成要件をすべて備えているか
どうか判断する。
侵害対象物がクレームの構成要件を、すべて文言どおり備えていれば文言侵害となる。一部の構成要件が、
クレームの文言どおりではないがクレームの構成要件と均等である場合、均等論侵害となりうる。
構成要件が均等であるか否かの判断について
Graver Tank v. Linde Air Products事件(85
USPQ 328, 1950)では、
1方法(manner or way)
2機能(function)
3結果(result)がそれぞれ実質的に同じであれば均等論が成立するとした。
均等論における論点
●均等の成立要件(方法・機能・結果)
●禁反言
●CAFCによる均等論判決
●侵害時の置換容易性
● as a whole vs. element-by-element
● copying vs. designing around
1950年 均等の成立要件(方法・機能・結果)Graver
Tank v. Linde Air Products事件(85USPQ328, 1950)
「電気溶接法およびそれに用いられる溶接剤」
事件
「電気溶接方法およびそれに用いられる溶接剤」の特許権者であるLinde Air Products社が、Graver Tank社ほか2社に対して
提起した特許侵害訴訟に関する下級審の判決を不服とする最高裁への上告事件であり、最高裁が下級審の判決を支持したものである。Linde Air
Products社の特許
カルシウムシリケートとマグネシウムシリケートとの組成物からなるフラックス。
Graver Tank社らの製品
マンガンシリケートとカルシウムシリケートとの組成物からなるフラックス。
マンガンシリケートがマグネシウムシリケートの均等物といい得るか否かが争点となった。
判断
Graver Tank社らの製品がLinde Air
Products社の特許のクレームを侵害する。方法(manner or way)、機能(function)
および結果(result)が実質的に同じであれば、均等論が成立する。
「アルカリ土類金属は、しばしばマンガン鉱中に含まれており、さらに特許のセンスからみてマンガンは
アルカリ土類金属に含め得るとの証言をもとに、両製品は同一のoperation、同一のresultを達成するものであるから、
マグネシウムシリケートはマンガンシリケートで置き換え得る。」
1952年 禁反言(1)
Exhibit Supply v. Ace Patents事件(315US126,
1952)「ボールのゲーム装置における回路の構造」
事件
ボールのゲーム装置における回路の構造に関する特許権者であるAce Patents Corp.が同様の装置を販売する
Exhibit Supply Co.に対して提起した特許侵害訴訟についての下級審の判決を不服とする第7巡回控訴裁判所への控訴事件である。
Ace Patents社の特許
台に導体支柱を設け、支柱のまわりにコイルスプリングを巻き、スプリングの先をたれ下がらせておいて、
ボールが支柱に当たって支柱が曲がったときにたれ下がったスプリングの先を台にセットした導体手段と接触させることにより、
瞬間的に電気回路が閉じるようにした構造のボールゲーム装置であり、導体手段が台に埋め込まれている( embedded in the table)。Exhibit Supply社の製品
同様の構造を有しているが、導体手段は、台に保持されてはいるが埋め込まれていない(carried by the table)。
本件特許は、審査段階で「台で保持」を「台中に埋め込む」に補正したものであり、このような場合にも均等の原則を適用して、
台に保持されているが埋め込まれていない訴訟物までを侵害といえるかどうかが争点となった。
判断
均等論は適用しない。
審査段階で“carried by the table(台で保持)”を“embedded in(台中に埋め込む)”に補正した以上、その導体手段が
埋め込まれた構造になっていないものは除外しているのであるから、導体手段が台に保持されているが、埋め込まれた構造に
なっていないイ号に均等論を適用することは禁反言の原則に反するので、均等論は適用しない。
1984年 CAFCによる均等論判決
Kinzenbaw v. Deere事件(222USPQ929, Fed. Cir. 1984)
「地面に溝を作って種を植えるユニット」
事件
Deere社らの有する農業機器要素に関する5件の特許に関するものであり、かかる農業機器要素を用いて農業機器を
製造販売しようとするKinzenbawらに対し、Deere社が事前の合意にもかかわらず製品を販売しないことは反トラスト法に違反し、
また前記特許のうち2件については無効であるとして、 Kinzenbawらが訴えたものである。
これに対してDeere社はKinzenbawらが製造している農業機器要素による前記5件の特許の侵害を反訴として訴えた。
Deere社の特許
CAFCにおいて特許が無効とされず特許侵害問題が判断されたのは前記5件の特許のうち1件のみである。
この特許は、地面に溝を作って種を植えるユニットに関し、最終的に特許された時点のクレームでは、土を切断するディスクの
半径に比べて、溝の深さを制御するためにディスクに取り付けられたゲージホイールの半径が大きいという限定が記載されている。Kinzenbawらの製品
Kinzenbawらの製造したユニットは、ディスクの半径の方が大きいものであった。
判断
侵害は成立しない。
審査段階で、先行技術に基づく拒絶理由を克服するために、「土を切断するディスクの半径に比べて、
溝の深さを制御するためにディスクに取り付けられたゲージホイールの半径が大きい」という限定がなされたのであって、
これを満たさないイ号は、文言侵害も均等論侵害も成立しない。
1983年 侵害時の置換容易性
Hughes Aircraft Co. v. US事(219USPQ473,
Fed. Cir. 1983)
「宇宙船の速度制御と姿勢制御」
事件
Hughes Aircraft社の有する宇宙船の速度制御と姿勢制御に関する特許を、NASAの建造した宇宙船が侵害しているとして
Hughes Aircraft社が訴えた。
Hughes Aircraft社の特許
宇宙船から地上に送られるデータをもとに地上から宇宙船に備えられた姿勢制御用ジェットを操作するものであり、
船外にデータを送る手段および船外からの制御信号を受けてジェットを操作する手段を要素として含んでいる。
NASAの製品
船上に姿勢制御も行なうコンピュータを搭載しており、姿勢制御操作において船外との信号のやりとりはない。
判断
均等論侵害である。
<船外へのデータ転送手段>と<船外からの制御信号によるジェット操作手段>は審査段階で先行技術に基づく拒絶理由を
克服するために限定されたものであるが、均等論はクレームされた発明に全体として適用しなければならないとして、
船外との信号のやりとりを行なわないNASAの宇宙船が均等論侵害とされた。
また、均等論の置換容易性は侵害時を基準に判断するとした。
1988年 ● as a whole
Texas Instruments v. USITC事件(6USPQ2d1886, Fed. Cir. 1988)
「小型携帯用電池作動電卓」
事件
Texas Instruments社(TI社)が、ある輸入計算機(電卓)が電卓に関するパイオニア発明と評されるTIのアメリカ特許を
侵害しているとして、米国国際貿易委員会(ITC)に輸入排除を訴えた。ITCは文言上も均等論のもとでも侵害していないと判断した。
TI社はこの判断を不服としてCAFCに控訴した。
TI社の特許
入力手段、電子的手段および表示手段からなる電卓。
輸入計算機
入力手段、電子的手段および表示手段からなるが、各手段は、TI特許の明細書に記載された構成とは異なっていた。

判断
侵害は成立しない。
入力手段、電子的手段および表示手段の機能は、単一の機能としては計算機の従来技術において存在しており、
結合の特許性は、機能が実行される構成上の変更の全体に依存している。クレームのポケット型計算機を構成しているのは
手段の全体であり、侵害と目された計算機を構成しているのは変更された手段の全体である。
したがって、各変更された手段の均等性は、侵害と目された装置との関連において、全体として評価される。
1990年 ● Pubic Domain
Wilson Sporting Goods v. David Geoffrey & Associate事件(14USPQ2d1942, Fed. Cir. 1990)
「ゴルフボール」
クレームと被告実施物と専攻技術との相互関係の判断手法

先行技術に対する仮想クレームの特許性を判断
事件
Wilsonの所有する特定のディンプル配置を特徴とするゴルフボールに関する特許をDavid Geoffrey & Associate (DGA)
のゴルフボールが侵害しているとする訴えについて、一審で侵害が認定されたことを不服としてDGAが控訴した。
クレーム
6つの大円径路(great-circle path)がディンプルと接しないことを特徴とするゴルフボール。
イ号(DGA)
大円径路が60個のディンプルと交差し、該大円径路がディンプルと交差する部分の長さである交差長と
ディンプル半径との比が13%以下のゴルフボール。
仮想クレーム
多くとも60個のディンプルが大円径路と交差し、交差長/半径比が13%以下であるゴルフボール。
先行技術
30個以上のディンプルが大円径路と交差し、交差長/半径比が17〜21%以下であるゴルフボール。

判断
侵害は成立しない。
・被告の製品は public domain内にあるものではないが、該製品と先行技術との間に思想づけられた差異はない
(no principled difference)。DGAのゴルフボールを包含するほど広い均等の範囲は public domainに広げることとなり、
そのような拡大は認められない。
・実質的に同じ全体的機能を、実質的に同じ方法で、実質的に同じ全体的結果を得るために行なっているものは均等であると
認められる。
・前記基準を満たすものであっても、均等の範囲は public domainにあるものには及ばない。
・均等論は、特許権者が出願時にクレームしたとしても獲得できなかったものを与えるものではない。
● as a whole
・Hughes Aircraft Co. v. US事件(219USPQ473, Fed. Cir. 1983)
・Martin v. Barber事件 (225USPQ233, Fed. Cir. 1985)
・Texas Instruments v. USITC事件 (6USPQ2d1886, Fed. Cir. 1988)
● element by element
・Lemelson v. US事件 (224USPQ526, Fed. Cir. 1984)
・Pennwalt v. Durand-Wayland事件 (4USPQ2d1737, Fed. Cir. 1987)
・Warner-Jenkinson Company, Inc. v. Hilton
Davis Chem. Co.事件 (117S. Ct.1040, 137L. Ed. 2d146, 1997)
1997年 禁反言(2)
Warner-Jenkinson
Co. v. Hilton Davis Chem Co.事件(41USPQ2d 1865, Sup. Court 1997)
「高純度の染料を製造する精製方法」
・均等論はelement-by-elementで判断し、クレーム全体で判断するas a wholeでは判断しない
・文言侵害と同様に、侵害者の意図は考慮しない
・均等論は侵害時点で判断。
・クレームの訂正が特許性に関するものでないと証明できない場合にはエストッペルが働くと推定(presumption)。
・均等論侵害の判断は、陪審員に委ねる
Hilton Davis
Chemical v. Warmer-Jenkinson Co.事件(43 USPQ 2d 1152, Fed. Cir. June 12, 1997)

地裁 → CAFC → 最高裁判所
侵害 侵害 差し戻し
(均等論) (均等論)
特許権者の側にクレーム変更の理由を明らかにする証明責任を課するべきである(presumption)。
特許権者が証明できない場合、クレーム変更は、特許性を獲得するためになされたものと推定し、出願経緯による禁反言
によって均等論の適用を否定するべきである。
19 フェスト事件
・フェスト社 v.焼結金属鉱業(SMC)
フェスト社 → 焼結(SMC)
ストール特許
キャロル特許
・Festo VI CAFC en banc判決(2000年11月29日)
フェスト事件 判決の経緯



ストール特許の審査経過
First Office
Action
・クレーム1〜12
「正確な動作方法が不明」
35USC112条第1パラグラフ違反(発明の記載要件、実施可能性要件、ベストモード要件)
・クレーム4〜12
「不適切に複数多数項に従属」
35USC112条第2パラグラフ違反(クレームの明確性要件)

再審査
・自発的補正
原クレーム1に、「1対の弾性シーリングリング」要件を加えたクレーム9を新たに追加
・ドイツ特許を提出
・キャロルの主張:「新しいクレーム9に示す、内部ピストンと外部本体の特徴的な構造は提出したドイツ特許により
教示されたものでも、提案されたものでもない」
焼結の装置
焼結金属鉱業(SMC)
・2方向にはたらく1つの弾性シーリングリング
・スリーブ外部はアルミニウム(磁化できない)
→ フェスト社のストール特許、キャロル特許の構成要件を文言上は備えていない
→ 均等論侵害?
CAFC Festo VI 判決
Festo社:ストール特許
・シーリング手段 → シーリングリング
→CAFC:原クレームの範囲の減縮
Festo社:ストール特許
・クレームの補正が「特許性に関する理由」による補正ではないことを、審査過程から証明できなかった
(補正は特許性に関するものと推定“presumption”)。
→CAFC:均等論の適用は禁反言により禁止
シーリングリング → 拡張解釈なし
磁化可能スリーブ
Festo社:キャロル特許
・「1対の弾性シーリングリング」
・クレームの補正が、「特許性に関する理由」による補正ではないことを審査過程から証明できなかった
→ CAFC
・補正はドイツ特許回避のためになされた
(ドイツ特許には、複数の磁石、両端部材およびクッション部材の組合せの記載なし)
・補正により禁反言が生じる
焼結金属鉱業が提示し、en banc rehearing で審理された5つの質問
質問1
クレームの補正が禁反言を引き起こすかどうかを判断する目的において、Warner Jenkinson事件の最高裁判決のいう
「特許性に関する実質的理由」とは、先行技術克服のための35 USC 102、103条に限られるのか、「特許性」は特許が
発行されるか否かに影響するあらゆる理由を意味するのか?
(112条拒絶に対するストール特許の補正(シーリングリング・磁化可能スリーブの追加)も「特許性」に関する補正か)
en banc rehearing で審理された5つの質問に対するCAFCの回答
質問1への回答
クレームの補正が禁反言を引き起こすかどうかを判断する目的において、「特許性に関する実質的理由」とは、
先行技術を克服または回避することには限られず、特許を得るための法的要件に関するあらゆる理由を含む。
(112条拒絶に対するストール特許の補正(シーリングリング・磁化可能スリーブの追加)も「特許性」に関する補正である)
en banc rehearing で審理された5つの質問
質問2
Warner Jenkinson事件の最高裁判決に従えば、自発的な補正(審査官の要求による補正でもなく拒絶への応答における
補正でもない場合)は禁反言をひきおこすか?
(キャロル特許の再審査における自発補正(1対の弾性シーリングリングの追加)も禁反言となるか?)
en banc rehearing で審理された5つの質問に対するCAFCの回答
質問2への回答
@自発的補正も他の補正と同じように扱う。つまり特許を得るための法的要件に関する理由でクレームを減縮する自発補正は、
そのクレーム要件に対し禁反言を引き起こす。
A審査段階で自発的になされた意見書の提出は、主題の放棄が明らかな場合、禁反言をひきおこす。(Festo事件では具体例なし)
en banc rehearing で審理された5つの質問
質問3
Warner Jenkinson事件の最高裁判決に従えば、クレームの補正によって禁反言がひきおこされた場合、補正した構成要件について、
均等論のもとで均等の範囲はどこまで広がるか?
en banc rehearing で審理された5つの質問に対するCAFCの回答
質問3への回答
クレームの補正によりあるクレーム要件に関して禁反言が働く場合、その補正されたクレーム要件に対して、
均等論は一切認められない。そのクレーム要件への均等論の適用は完全に禁止される(完全禁止)。
en banc rehearing で審理された5つの質問
質問4
クレーム補正の理由について何ら説明がなく、従ってWarner Jenkinson事件にいう推定presumptionが適用された場合、
補正した構成要件について、均等論のもとで均等の範囲はどこまで広がるか?
en banc rehearingで審理された5つの質問に対するCAFCの回答
質問4への回答
クレームの補正に何ら説明がない場合、補正されたクレーム要件に対して、均等論は一切認められない。
en banc rehearing で審理された5つの質問
質問5
本事件における特許侵害との判決は、Warner Jenkinson事件におけるオール・エレメント・ルールに違反しているのではないか?
en banc rehearing で審理された5つの質問に対するCAFCの回答
質問5への回答
質問1〜4への回答から、この問題については今回は判断不要である。
まとめ
・特許性に関する理由で補正を行なった場合、均等論の適用は完全に禁止(complete bar)。
(101条、112条補正、自発補正、意見書の提出に関しても、禁反言が生じる)
・12人中、4人の判事が反対の意思を表明
2002年5月28日、最高裁の判断が下された。
まず、1つめの質問について、最高裁はCAFCの判断を支持した。
すなわち、特許法上の要件を満たすためにクレームを減縮する補正を行なった場合、禁反言がはたらくことを確認した。
Festo社は「先行技術とは無関係に、単に形式的な問題でクレームを補正した場合にも禁反言が働くのか」と主張したが、
これに対して最高裁は、「補正が本当に形式的な理由によるものであるなら、クレームを減縮することはなく、
すなわち禁反言を引き起こすことはないであろう」とした。
次に2つ目の質問に関して、最高裁はCAFCの“complete bar”を否定し、「クレームを減縮補正したからといって、
公正な解釈のもとで放棄したと考えられる物を超え、補正の時点で予期し得なかった物まで放棄したと考える理由はない」
と判示する一方、「補正がイ号を放棄したものではないことを示す立証責任は、特許権者に負わせる」とした。
つまり、補正した構成要件について“complete bar”がpresumption(推定)されるが、特許権者は、補正の時点においてクレームを
イ号を文言上含むように書くことが困難であったことを示すことにより、この推定presumptionに反対することができるとした。
・特許性に関する理由でクレームを減縮補正しており、禁反言がはたらくことに異論はない。
・補正によりどの領域を放棄したのかが問題であろう。
禁反言については、Festo社が、補正がイ号を放棄したものではないことを示せるか否かがポイントであり、
この点をまずCAFCあるいは地裁で判断すべしとして差戻した。
最高裁は、つぎのような場合は(補正の時点においてイ号が文言上含まれるように、クレームを書くのが困難であったことを示せば)、“presumption(推定)”を覆すことができるとしている。
1イ号を補正の時点で予測できなかった場合(unforseeability)
2補正した理由が、イ号とのあいだに関係がない場合(tangentialness)
3実体のない代替物を、特許権者が補正時のクレームに当然に記載できたものではないことを示唆するなんらかの理由がある場合
このうち、立証が最も容易なのは、1の「イ号を補正の時点で予測できなかった場合」と思われる。
たとえば、クレームの構成要件を、補正後に登場した新材料や新技術に置きかえた場合がこれに該当する。
一方で、クレームの構成要件を、補正時にすでに知られていた材料や技術で置きかえて文言上クレームを侵害しないようにした場合、
「イ号を補正の時点で予測できなかった」と主張することは難しい。
CAFC Festo
IX 判決
最高裁からCAFCへ差し戻され、CAFCでは、補正がイ号を放棄したものであるか否かが争われ、2003年9月26日に判決が出され、
地裁へ差し戻すこととしている。CAFCは、まず、3つのケースを判断する際の一般的な基準について述べ、
そのうえで、本件が各ケースに該当するかについて、具体的に判断している。
1予測不能性(unforseeablity)について
たとえば、「真空管に対するトランジスタ」、「ファスナーに対してマジックテープ」のような新しい技術、
関連技術分野で知られていない技術は、通常、予測が不可能であるが、古い技術(old technology)は、予測が可能と判断されやすい。
この予測が可能であるかどうかは、補正時の当業者の技術に対する理解などの事実問題が含まれており、
裁判所は、専門家証言を含めた外的証拠を考慮に入れて、判断することができる。
本件の場合にも、イ号が、当業者にとって補正時に予測可能なものであるか否かの判断は事実問題が含まれるとし、
新たな証拠を追加して、地裁で審理を行なうように差し戻すとしている。
2tangential relationについて
「補正の理由が、イ号との関係において、周辺的つまり直接関係がないかどうか」を問うものである。
直接的に関係がない場合の具体的な例をあげることはできないが、先行技術にイ号の内容が含まれるような場合に、
先行技術を回避するために補正が行なわれたときは、補正の理由はイ号と直接的に関係があるといえる。
このケースに該当するか否かの判断は、Warner-Jenkinson事件におけるpresumptionと同様、客観的に明らかな補正の理由に
焦点をあてる必要があり、特許とその出願経過の公示機能の重要性から、出願経過から判断すべきである。
さらに、この判断は、なされた補正の内容に焦点をあてる必要があり、そのため、出願経過が参酌される。
したがって、この判断は、出願経過の内容を解釈するのに当業者の証言が必要な場合を除き、証拠を追加することなく、
出願経過から判断されるべきであるとしている。
本件の場合、補正の理由がイ号と直接的に関係がないことを、Festo社が示せていないと、CAFCは判断した。
3実体のない代替物を、特許権者が補正時のクレームに当然に記載できたものではないことを示唆するなんらかの理由がある場合
特許権者が、unforseeability、tangentialness以外の理由で、イ号を放棄していないと主張できる可能性を残すものである。
補正時にイ号がクレームに含まれるように記載できない理由として、たとえば言語の欠点(shortcomings of language)があげられる。
このケースに該当するか否かの判断材料は、出願経過に限られるべきである。
Festo社は、イ号の態様が劣ったものであって、クレームに記載できるような構造ではないと主張したが、
補正時にイ号がクレームに含まれるように記載できない理由には、該当しないと判断された
禁反言と均等論
CAFCの創設以降、プロパテント政策がとられて、均等論が広く適用されてきたが、均等論の適用を阻却する“禁反言”がWarner-Jenkinson事件およびFesto事件で大きな論点となった。とくにFesto事件では、補正の根拠が明確でない場合には、
均等論は<フレキシブルバー>として機能するとされたCAFCの判断を、<コンプリートバー>として機能し、
均等論を完全に排除するとの判断に覆され、明らかにアンチパテントの方向へと移行している。
そののち、<コンプリートバー>という判断は明らかに均等論を抑制しすぎているため、<コンプリートバーを推定>
というように、ある程度、緩和するように修正されてはいる。しかしながら、アメリカの特許訴訟において、
これまでのように均等論を広く適用するプロパテントから、均等論の適用を多少抑制しようというアンチパテントの方向へ
移行していることは明らかであろう。

Festo事件のその後
2001年6月18日、Supreme Courtは、Festoの petitionを受け入れ、以下の2点について、
再度審理を行なうことを決定した。
・特許法の規定を満たすための補正はすべて、その規定が先行技術に関するものでなくても、
理由の如何にかかわらず、自動的に禁反言がはたらくのか?
・禁反言がはたらく場合、均等論の適用は完全に禁止されるのか?


・レスポンスにおいて補正の理由を説明する
たとえば、
・減縮補正ではない