米国の特許制度

日本知的財産協会 関西C4Bコース
第6回 (2008年1月22日)

2007.12.20

朝日奈特許事務所  弁理士 朝日奈宗太

ー 目次 ー

15.特許発行後の手続き
     15.1 Reissue
               (以上第5回)

(前回への追加)
  RCEにかかわる3ヵ月のサスペンジョン(suspension)

   15.2 Reexamination
     15.3 Certificate of Correction
16.ベストモード
  16.1 ベストモード要件
  16.2 ベストモードとフロード

17.侵害訴訟
   17.1 侵害訴訟
   17.2 侵害行為
    17.3 確認訴訟
   17.4 無効訴訟
   17.5 米国特有の司法制度

18.米国における均等論の歴史
  18.1  文言侵害と均等論侵害








(前回への追加)

RCEにかかわる3ヵ月のサスペンジョン(suspension)
前回RCEについて説明しましたが、 補遺的につぎの説明をします。

アメリカ特許出願でのFinal Office ActionまたはAdvisory Actionがあった際、
当該出願を維持するための一手段として、当該通知に対する応答期限内に
継続審査請求(Request for Continued Examinaiton(RCE))の手続をとることができるが、
その場合、

@原則として、RCEの手続とともにクレームの補正手続および(必要に応じて)37CFR§1.132
デクラレーションの提出手続を応答期限までにとる必要がある。

Aしかし、前記@において、応答期限までにクレームの補正内容がきまらなかったり、デクラレーション
が間に合わないなどの正当かつ十分な理由(for good and sufficient cause)がある場合は、
RCE
の手続とともに Office Action の一時的停止(suspension of action by the office
いわゆる「サスペンジョン」)の手続をとることができる。ただし、サスペンジョンの手続をとる際、
停止の期間(通常3ヵ月)(トータルで6ヵ月まで延長可能)を明示し、処理手数料($130)を支払わなければならない(37CFR§1.103)。

15.2 Reeexamination

アメリカ特許制度には特許異議の申立制度がなく、第三者が特許の有効性を争うには、
侵害の警告を受けた者が裁判所に特許無効の確認訴訟(Declaratory Judgement)を提起するか、
特許侵害訴訟の場で特許無効の反訴をするなどの手段によらざるを得なかった。

しかも、このような裁判所での手続ではかなり高い確率で特許が無効と判断されていたため、
米国では特許が権利として不安定なものであることが指摘されていた。

このような問題点を是正するために、特許権者であるか第三者であるかを問わず、
誰でも再審査を請求することができる再審査制度(Re-examination)1980年の法改正で導入された。

査定系再審査(ex parte reexamination)
再審査の流れ
@発行済み特許の特許性に関係がある先行技術文献(引例)をもとに、再審査請求をする。
再審査請求は特許権者でも第三者でも何人も行うことができる。

A引例が対象となる特許の特許性に関する実質的なnew problemを生じるものであるか否かを3ヵ月以内に決定する。

B New problemが発見されなければ、再審査請求は棄却される。New problemがあると認められたとき、
コミッショナーによって再審査をすべき旨の命令がなされ、審査が行われる。

CNew problemが発見された場合には、再審査命令が発せられ、特許権者にその旨が通知される。
通知を受けた特許権者は、訂正などを行って意見書を提出する期間が2ヵ月間与えられる。第三者が
再審査請求を行った場合には、特許権者の意見書に対して弁駁書を提出する期間が2ヵ月間与えられる。

D特許権者と第三者の主張が出揃うと審査官は特許の再審査を開始する。以後の手続きは、
通常の審査と同様に特許権者と審査官の間のみで進められる。再審査が終了すると、
新たなクレームの証明書が発行される。

しかし、査定系再審査では、特許のクレームの有効性に関し提出できる判断資料は
先行特許と刊行物のみ
に制限され、その他の無効事由、たとえば特許出願前に公然と使用、
販売されていたこと(prior use or sale)あるいは特許取得の過程でフロード(fraud)があったなどの事由を
根拠として再審査を請求することはできない。

また、第三者は先行技術文献をUSPTOに提出できるのみで、その後の応答手続きには全く関与することができなかった。
そのため、特許性を争う手段として有効に機能しているとはいえず、特許異議の申立制度を有する
EUおよび日本(無効審判制度がある)が改正を強く要求していた。

そこで、1999年に再審査制度が改正され、再審査の審理に第三者が関与できる当事者系再審査が設けられた。

当事者系再審査(inter partes reexamination)
留意点
・何人も請求することができる
ただし、利害関係が必要であり、匿名での請求は認められない

・1999年11月29日以降の出願に限る
再審査制度に関する法改正

2002104
再審査制度に関する改正法案が議会(上院と下院)を通過。

従来の再審査制度における問題点

@審査において引用された先行技術文献をもとにし再審査請求をすることはできなかった。

先審査が、先行文献の解釈を誤るなど、適切になされていない場合があっても再審査請求はできなかった。

A当事者系再審査制度における第三者請求人は、BPAIの決定に不服があるときでもCAFCへ提訴することは認められなかった。

第三者請求人は、BPAIの決定に不服の場合、該特許権に対して無効訴訟を
起こさなければならず(侵害訴訟が起こったとき)、費用の点で負担が大きかった。
また、第三者請求人は、CAFCに提訴できないので、 USPTOの特許権者に有利な判断を
排除することができなかった。

査定系再審査
☆特許権者は、BPAIに審判を請求できる。
BPAIの審決に不服のあるときは、さらにCAFCへ提訴することができる。

当事者系再審査
☆特許権者は、査定系と同じで、BPAIおよびCAFCへのアピールができる。
☆しかし、第三者請求人は、BPAIにのみ審判を請求することができ、CAFCへの提訴はできない。

改正の内容
@審査過程で引用された先行技術のみに基づいて請求する場合であっても、再審査を請求できる。
A当事者系再審査制度における第三者請求人も、Board of Patent Appeals and Interferences
(BPAI)
の審決に不服があるときは、CAFCに提訴できる。

改正によって
@審査過程で、審査官によって引用された参考文献をもとにして、再審査を請求できるようになった。
ABPAIの審決に不服の場合、CAFCに対して提訴できることになった。
BCAFCに対して提訴できる権利は、 USPTOによる特許権者に有利な判断を
排除することができると思われる。

15.3 Certificate of Correction
特許発行後に誤りが発見された場合
@ USPTOが特許証の印刷に際して誤りをおかした場合、料金無料で
訂正証明書(Certificate of Correction)が発行される。

A 筆記上の誤り、タイプ上の誤り、その他USPTOの過失によらない些細な誤りが特許証に発見された場合、
一定料金($100)を支払うことによって訂正証明書が発行される。

B 特許証発行後に発明者でない者が発明者とされていたり、発明者である者が
発明者とされていなかったことが発見された場合、当該発明者の誤記が過失によりかつ詐欺的意図のないものであれば、
一定料金($100)を支払うことによって訂正証明書が発行される。

C先行特許に記載があるなどの新たに発見された理由で特許の中の1つまたはそれ以上のクレームが
無効であると考えられる場合、特許権者はそのクレームを放棄(disclaimer)することができる。

16.ベストモード
16.1 ベストモード要件
明細書には、発明者が最良と考える
 実施の形態を記載しなければならない。

35 U.S.C.§112
アメリカ特許法§112−@によれば、「明細書(Specification)には、その発明を実施または
使用する方法(the manner and process of making and using the invention)を、その発明の属する技術分野
における熟練者(any person skilled in the art)が実施できるように充分に明確、簡潔かつ適切な語句で記述し、
またその発明を実施するのに発明者が最もよいと考える態様(ベストモード)を記載しなければならない」とされている。

すなわち、当業者がその明細書を見れば発明を実施できるように充分明確、簡潔かつ適切な用語を用いて、
発明を実施または使用する方法などの説明を書き、さらに発明者が最良と考える実施の態様を記載しなければならない。

§ 発明者が最良と考える実施の形態
開示しなければならない実施の形態は、発明者が最良と考えるものであり、発明者の主観的判断に基づく。
 その後に商業化されたものが他の実施態様であったとしても、また第三者の判断では
他の実施態様が最良であったとしても問題にはならない。

c 出願日が基準
最良の形態とは、出願日の時点で発明者が最良と考えるものである。
すなわち、ベストモード要件を満たすか否かの判断は、出願日を基準とする。

 したがって、出願日以降に新しいベストモードが判明しても、出願時でのベストモードが記載されていれば、
ベストモード要件は満たされている。

10100°CでのProcessについて、実施例を開示して出願した。
 出願後に、7580°Cでとくに良好な結果が得られることを発見したが、この温度範囲は明細書中に開示されていなかった。


ベストモード要件に適合している。
出願後に発見したベストモードまで開示する必要はない。

10100°CでのProcessについて、実施例を開示して出願した。
 とくに7580°Cで良好な結果が得られることを知っていたが、
明細書にはこの温度範囲を開示しなかった。

ベストモード要件違反になる。

ベストモードを知っていながら開示しなかった。

・クレーム
  化合物Xを投与することからなる菌の繁殖を抑制する方法。

・明細書
  化合物Xは既知の化合物Yにくらべて2倍の効果を有する有効な抗菌剤である。

ベストモード要件違反になる。
 菌が特定されておらず、化合物Xが有効に作用する菌が何であるか、当業者が知ることができないからである。

この場合、「発明を、当業者が生産、使用しうる程度に記載しなければならない」とする実施可能性要件にも違反
しているので、USPTOは実施可能性要件を満たしていないとして拒絶をする。

しかし、審査官がベストモード要件違反に基づいてActionをかけなかったからといって、
その出願がアメリカ特許法§112に規定された要件を満たしていると思い込み、安心することはきわめて危険である。

なぜなら、審査段階においては単に明細書中に実施例が記載されていさえすれば
審査官はそれがベストモードであると考えざるを得ないだけで、その出願がベストモードを
含んでいることを保証するものでは決してないからである。

従って、もしベストモード要件違反が看過されてそのまま特許になったとしても、
のちの侵害訴訟における反訴としての特許無効の争いの場において相手側に有利な根拠
(ベストモード違反)を与えることになってしまう。

☆ここに大きな落とし穴がある。★

これまで、ベストモードとは実施例のことであるとの誤解があった。

例えば

モノマーA10gをメタノール50mLに溶かし、重合開始剤X0.1g添加して還流下に加熱し、2時間後にAのポリマー9gを得た
と明細書に記載したとしよう。
 多くの人はこれでこと足れりと考えているようである。
 しかし、実施例としてはこれで充分であるかもしれないが、ベストモード要件に適合しているとは必ずしもいえない。

ベストモードは、たとえば発明にかかわる製品を市場に出す場合にその発明者(出願人)
が実施するであろう具体的方法としての最も優れた実施態様であり、むしろ発明者が出願時にはknow-howとして隠したがるものである。

ベストモード要件はアメリカ特許法§112にいわゆる実施可能要件および発明の開示充分要件とともに
規定されているが、このような規定が設けられた趣旨は、
発明者が発明の優れた実施例を隠して特許出願することを抑制することにある。

In re Gay135 USPQ 311
従って、出願人が発明の優秀性のみを強調し、know-howないしtrade secretsの開示を
さし控えようとすることはきわめて危険である。

 1960年ごろまでは、ベストモード要件をとりあげ、これが侵害訴訟における特許無効の抗弁として用いられることはなかった。
 1960年代中ごろになると、ベストモード要件を満足しない特許は無効であると判断されるようになり、
この要件の重要性が認識されるようになった。

 ところで、審査段階においては、ベストモード要件はあまり問題にされていない。
すなわち審査官は、出願明細書中に少なくとも1つの実施例が開示されていれば、
ベストモード要件を満足していると推定する。これはUSPTOにおいては連邦裁判所における
discovery proceedingsのようなものが存在しないという実務的理由に起因する。

16.2 ベストモードとフロード
フロードの問題はベストモードに関連しても起こり得る。
フロードとは
一言でいえばUSPTOをだまして特許をとったということである

たとえば
密接に関係する先行技術をUSPTOに開示しない
というようにUSPTOに詐欺をはたらいて特許を取得することである
フロードを働いて取得した特許はのちに訴訟において強行することができない!
ベストモード要件がかかわるのは、発明者が自己のベストモードを知っていながら、
故意にこれを隠して特許を取得する場合である。

なおフロードの問題は、出願の審査手続においてはほとんど発見されないが、
訴訟手続の中で次第に明らかになってゆく。しかもそのときにはキズのある特許に基づいて
第三者の侵害行為を訴追しているのであり、このような場合逆に相手方から後述のようなtreble damages(3倍損害賠償額)
を請求される恐れをはらんでいるので、とくに注意を払う必要がある。

一般にフロードが成立する要件
 (a) 事実の不正直な表現
 (b) 故意にだますこと
 (c) 審査官による信頼および期待の裏切りである

フロードが成立すれば、事情によっては(たとえばフロードにより取得された特許に基づき業界を専有した場合)、
その特許権者は反トラスト法に基づき、treble damagesの責任を追及されよう。

判例@
Gay事件(135 USPQ 331, CCPA 1962)
発明
炊飯装置

事件
USPTOは、明細書には炊飯装置に設けた孔の大きさおよびその数が示されておらず、
ベストモードを記載していない
と判断して出願を拒絶した。

 出願人はこの拒絶査定を不服としてCCPAに控訴した。

判断
拒絶査定は覆された。

 出願人がベストモードと考えているものを記載していれば
それでアメリカ特許法§112ベストモード要件を満足しており、各実施態様ごとに全て
ベストモードを記載することまで法律は要求していない。

判例A
Hayes Microcomputer Products Inc. v. Ven-Tel. Inc事件(25 USPQ2d 1241, Fed. Cir. 1992)

発明
ブランク期間およびその後に続くエスケープ信号を検出して動作モードを切り替えるモデム
モデムの動作は、マイクロプロセッサおよびマイクロプロセッサを動作させるプログラムである
ファームウェアにより実現されている。

事件
被告Ven-Tel社は、ブランク期間を検出するタイミング手段について、発明者がタイミング手段を
実行するFirmwareを本件発明を実施するベストモードと考えているが、Firmwareの詳細が
開示されていないと主張した。

 これに対して、発明者は、ベストモードは特定の“firmware listing”Firmwareに記憶することであり、
特定の“firmware listing”はベストモードでないと信じていたことを示す証拠を提出した。

判断
被告の訴えを退ける。
 ベストモード要件が満足されているか否かは、発明の技術的範囲、技術レベル、
発明者の信念についての証拠および発明をめぐる状況
により判断される(発明者が最良と考える態様であればよい)。

判例B
Dale Electronics事件 (180 USPQ 225, 1st Cir. 1973)

発明
絶縁性流体を特定の方法で電気抵抗体のまわりに注入、硬化させる抵抗器の製造方法

事件
発明者は、その絶縁性流体として「Rogers RX 600」が本発明に特に好適であることを
知っていたが、そのことを明細書に開示していなかった。

 発明者は「Rogers RX 600」についての開示を故意に差し控えたのではないと主張した。

判断
特許は権利行使できない。

 故意であったかどうかは重要な問題ではない。たとえ、出願人が出願当時に知っていたベストモードを
good faith
で開示しなかったとしても、その特許は無効を免れることはできない。

判例C
Northern Telecom v. Datapoint事件(15 USPQ2d 1321, Fed Cir. 1990)

発明
市販のカセットテープをコンピュータの記憶媒体として用いるデータの入力装置

事件
Sycor社から権利を取得したNorthern Telecom社が、 Datapoint社を特許侵害で訴えた。

事件
Sycor社の明細書には、市販のカセットテープを用いる実施態様が開示されていたが、
実際は強度および磁気特性に優れる特注のテープを購入、使用していた。このため、
特許はベストモード開示義務違反であるとされた。

  これに対しSycor社は、出願当時市販されていた3M社のオーディオ用カセットテープが明細書に適合すると反論した。

判断
特許は権利行使できない。
 3M社のオーディオ用カセットテープが適合するのであれば、それをベストモードであるとして
記載しなければならず、記載していない以上、ベストモード開示義務違反を免れない。

判例D
Union Carbide v. Borg-Warner事件(193 USPQ 1, 6th Cir. 1977)

発明
特殊な弁および押出し機構を有する特定の装置を用いた発泡熱可塑性樹脂成形品の成形方法

事件
発明の完成後、特許出願前にパイロットプラント(試験的工場)において、発明者のものより優れた
弁と押出し機構が開発された。しかし発明者は、この改良点を知らされていたが開示せずに出願した。

判断
特許は権利行使できない。

 発明者自身ではなく、会社内の第三者がパイロットプラントにて改良した場合でも、
出願日前に発明者はその改良を知っていたのだから、それをベストモードとして開示すべきであった。

判例E
Sylgab Steel v. lmoco-Gateway事件(178 USPQ 22,District Court, N. D. Illinois, E. Div. 1973)

事件
出願人は継続出願をしたが、継続出願前に原出願の明細書中に開示した
自己の発明の実施態様よりも優れた実施態様を発見
していた。

 侵害訴訟において、出願人が継続出願日において、自己の知るベストモードを開示していないとして、
被告は特許の無効を訴えた。

判断
被告の訴えを退ける。
 原出願の時点では、このベストモードが発見されていなかったので、
ベストモード要件違反にならない。出願日より後で発見されたベストモードは開示する必要がない。

判例F
Chemcast Corp v. Arco Industries Corp事件(16 USPQ2d 1033, Fed. Cir. 1990)

事件
Chemcast社がArco社をgrommetに関する特許を侵害しているとして訴えたところ、
Arco
社はベストモード違反により特許は無効であると反訴した。

事件
発明者は、クレームされた grommetを製造する上で好ましい特定の硬度を有する
プラスチックゾル材料(R-4467)を材料メーカーから供給されていた。
ただし、R-4467は材料メーカーの企業秘密とされており、発明者は、その構造式および製造法を知らなかった。

判断
特許は権利行使できない。
 材料メーカーが企業秘密と考えていた材料でも、それがベストモードに関わるものであれば、
当業者がそれを実施できるようにgrommet材料の供給者、および商標名を開示すべきであり、
ベストモード違反は免れない。

判例G
Consolidated Aluminum v. Foseco International事件(15 USPQ2d 1481, Fed. Cir. 1990)

発明
溶融金属を濾過する発泡セラミックフィルターの製造および使用(Consolidated Aluminum社)

事件
出願時に知られていた真実のベストモードは “CS1-B”スラリーを使用するものであったが、
Consolidated Aluminum
社は意図的にこのベストモードを隠蔽し、実施不能の虚偽のベストモードを記載し、
特許を取得した(‘917特許)。また別に“CS1-B”スラリーを使用した発泡セラミックフィルターに
関する発明と、さらにその他2特許をCIP出願で特許取得した。

判断
CAFCは、詐欺が故意に行われたという立証がなくても、特許は権利行使できない
(unenforceable)
とした。

 しかも、Consolidated Aluminum社の求めている衡平法の適用に対し、
test of immediate and necessary relation
を適用することで、
関連する特許全てについても権利行使できないと判断した。

判断
immediate and necessary relation” とは、ある出願行為が反衡平的である場合、
それと直接的かつ必要不可欠の関係にある他の出願にも影響が及んで権利行使が
できなくなるという法理である。

判例H
Kawai事件(178 USPQ 158, CCPA 1973

発明
右下の化学式で表される化合物(薬理効果がある)

事件
抵触審査の手続において、カワイらは日本出願に基づく優先権を主張した。
 しかし、日本出願の明細書には、化合物の用途や薬理効果について簡単な記載しかなかった。

日本出願の内容
・右の化学式で表わされる化合物

・用途・効能:

*「本発明は中枢神経系に薬理作用を及ぼす2H-1,4-benzo-diazepine-2-one誘導体の製法に関する」

*「化合物は中枢神経系に卓越した薬理効果を有し、薬として価値のあるものである」

日本出願の明細書には、化合物の用途・効能について簡単な記載しかなく、ベストモード要件を満足しているとはいえないものであった。

カワイらの主張
Archerらの古い特許によく似た化合物が開示されている
CH2が非官能性であるので、両者は類似化合物である
Archerの特許に化合物の用途・効能が記載されているから、カワイらの化合物の用途・効能も明らかである

判断
たとえばClClClCH2−Clは、化学的性質がほとんど似ていないから、 −CH2−が非官能であると一概にはいえない。
 化学式上のわずかな違いによって、人体に対する効能が大きく異なることは、当業者にとって周知の事実である。
 Archerらの化合物とカワイらの化合物とは構造が相違するから、 Archerからカワイらの化合物の用途が明らかであるとはいえない。

優先権主張は認められない。
 外国出願の出願日を主張するのであれば、その外国出願がベストモード要件を満たしていなければならない。
 カワイらの日本出願は、ベストモード要件を満たしているといえない。
外国出願を考えている場合には、日本出願にベストモードを開示しておくこと。


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