米国の特許制度

日本知的財産協会 関西C4Bコース
第4回(2007年11月12日)

2007.12.19

朝日奈特許事務所  弁理士 朝日奈宗太


第4回 目次

11.出願後の手続きの流れ
             内容審査
             (以上第3回)
改正規則の施行は停止された
-仮処分差止決定が下る-


  11.1方式審査と予備的補正
  11.2 出願の単一性
12.オフィスアクション
    12.1 First Office Action
    12.2 Final Office Action
    12.3 Advisory Action
    12.4 Notice of Appeal
    12.5 Notice of Allowance
    12.6 Letters Patent
13.拒絶理由
     13.1 拒絶理由
    新規性非自明性
     13.2 抵触審査
    13.3 重複特許 (Double Patenting)
14 .OAへの対応
      14.1 答弁書
      14.2 審査官との面接










改正規則の施行は停止された
-仮処分差止決定が下る-

アメリカ特許商標庁は、継続出願・RCEおよびクレームの審査に関する特許出願についての規則を
改正するための最終規則の告示を
Federal Registerに公表していた。
 継続出願、Patentably indistinctなクレームを含む特許出願およびクレームの審査に関するプラクティスの
変更については、
72Fed.Reg.46716(2007-8-21)(クレームおよび継続出願の最終規則)を参照)。
Federal Registerでの最終規則の告示によれば、クレームおよび継続出願の最終規則のプラクティス変更の
施行日は
2007-11-1であると公表されていた。
しかし、2007-10-31に連邦裁判所のバージニア東部地区裁判所は仮処分申請について差止命令を発し、
特許庁に対してクレームおよび継続出願の最終規則の改正施行を停止するように命じた。

 したがって、クレームおよび継続出願の最終規則の実務上の施行は2007-11-1には発効しないこととなった。
 特許庁の職員は、さらに通知があるまで、2007-10-31現在有効な規則および手続にもとづいて特許出願を処理し、
審査し続けることになった。

 このウェブサイトは(将来)更新され、さらに情報が入手され次第、特許庁の職員は通知されることになる、
とのことである。

なお、改正規則の施行差止めについては、特許法改正の動きとも関連があるようであり、
今後特許法の改正がどのように展開していくかによっても、たがいに影響を受けうることが懸念される。
今後この改正規則の停止の訴訟と改正法案の動きにもしばらく目が離せないであろう。



11.1方式審査と予備的補正

最初に出願書類を、方式について審査する。
もしUSPTOの定める方式に違反していれば、その旨が出願人に通知される。
 この通知から6ヵ月以内にその方式欠缺の訂正をしなければ、出願は放棄されたものとされる。

 一方、方式に適合すると認められれば、出願番号が付され、出願番号(Serial No.
および出願日
を出願人に通知する。
 優先権の期限が迫っているなどの理由で、たとえば形式上の不備を訂正できていない場合には、
出願人は、出願日から3ヵ月以内に、明細書の形式上の不備を訂正したプリリミナリー・アメンドメント
Preliminary Amendmentを提出することが好ましい。
 プリリミナリー・アメンドメントの提出によって、First Office Actionが直接発明内容に向けられることになり、
単なる形式不備を指摘するだけの
Office Actionを避けることができる。

11.2出願の単一性
 方式要件を満たした出願に関しては、内容の審査が行われる。
まず、審査官は、クレームに2以上の独立して区別される発明が含まれていないかチェックする。
 日本でいう「出願の単一性」は、米国ではRestriction Requirement and Election of Species
(限定と種の選択)
として扱われる。
Restriction requirement
 審査官は、クレーム中に2以上の独立して区別される発明が含まれていると認める場合には、
出願人に対し1つの発明に限定
Restrictionするように要求する。

たとえば
 1つの出願が「独立した個別の」2つの発明をクレームしている場合、審査官は、出願人に
2つの異なる発明があることを通知し、それらの中から1つに限定するように要求する。

 出願人はその要求に賛同できないとしても、1つの発明を選択しなくてはならない。
選択したクレームだけが審査を受け、選択しなかったクレームは全て審査から排除される。
選択しなかったクレームについては親出願がissueされるまでに分割出願をすることができる。
Election of Species
 また、クレーム中に多くの speciesがあげられている場合、審査官は先行技術調査の便宜のため
speciesの選択 Electionを求める。

たとえば
 2つの異なる実施態様を含む包括的な独立クレームと、それに従属する種のクレームが2つあり、
2つの種のクレームはそれぞれ独立した個別の発明を規定している場合。

 審査官は出願人に1つの種を選択するように要求し、出願人が選択した種のクレームについてサーチする。
選択した種のクレームが記載された先行技術文献が見つかった場合、その種のクレームは拒絶される。
選択した種のクレームが許可されない限り、包括的クレームについては審査されない。
一方、審査官が、選択した種のクレームが許可すべきものだと判断した場合、審査官は包括的クレームについてサーチする。 
包括的クレームも許可すべきものだと判断されると、出願人は包括的クレームと種のクレームの両方を含む特許を受けることができる。

〜マーカッシュクレームの場合〜
審査官は出願人に1つの種を選択するように要求する。

審査官は出願人が選択した種について審査する。

選択した種が記載された先行技術文献が見つかった場合は拒絶される。

一方、選択した種が許可すべきものだと判断した場合、審査官は他のスピーシーズについてサーチする。

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12オフィスアクション

出願の手続の流れ

 

オフィスアクション

 審査の対象となる発明が特定されると、審査官は特定された発明の特許要件について審査する。
審査の結果、拒絶すべきものと判断した場合、出願人に
Office Actionを発し、出願人の応答を求める。
 審査官は、一度にすべての拒絶を指摘することとなっている。
拒絶には、
Rejection と Objectionとがある。
Rejection:特許性に関する拒絶
Objection:形式的な不備に関する拒絶
 Office Actionに対する応答期間は、通常発送日から(37 CFR 1.136(a))3ヵ月である(法律は6ヵ月)。
 期日が休日の場合、次のビジネス日が期限となる。
 応答期間は、OA発送日からの指定期間と合計して最大6ヵ月まで延長できる。

たとえば:
OAの応答期間が3ヵ月と指定されていれば、延長は最大3ヵ月。(指定期間の3ヵ月+延長の3ヵ月=6ヵ月)



OAの応答期間が1ヵ月と指定されていれば、延長は最大5ヵ月。
(指定期間の1ヵ月+延長の5ヵ月=6ヵ月)

応答期間を延長するためには、期間延長を事前に求めなくてもよい。
 しかし、Responseを提出する際に、延長料金を支払わなければ、その提出日が認められない。



応答期間の延長料金

     延長料金
1ヵ月目   $110
2ヵ月目   $420
3ヵ月目   $950
4ヵ月目 $1,480
5ヵ月目 $2,010

Office Actionに対して応答しなければ、出願は「放棄」となる。

12.1First Office Action

 審査遅延の問題を回避するため、原則として Office Action2回First Office ActionFinal Office Action )とされている。
 First Office Action新規性、非自明性の欠如を理由としてクレームを拒絶するときは、審査官は最も適切な文献を
指摘しなければならない。この引用文献の写しは無料で
Office Actionに添付される。
 また、クレームが許可されるように適当な補正を行なうことが示唆される場合もあり、明細書および図面などの
方式上の不備が指摘されることもある。

 Office Actionに対する答弁書では、各拒絶に対して充分に応答しなければならない。ある理由に対して応答しなければ、
出願放棄とみなされる場合がある。

 拒絶理由を克服するために宣誓供述書(Affidavit, Rule 1.132の提出が必要だと考える場合には、最初の答弁書と
同時に提出することが望ましい。

宣誓供述書は、つぎのような場合に使用できる。
・引用文献に対して答弁する場合
発明の有用性を証明する場合
発明の商業的成功をもとに非自明性を主張する場合

 審査における二次的考慮事項としては、ロングフェルトニーズ(long felt needs)が最も一般的であるが、
商業的成功も同じく有効な手段である。

 商業的成功(Commercial Success)とは、米国の審査において非自明性の二次的考慮事項(secondary meaning
であり、発明の顕著な効果などで反論しても、審査官の判断が覆らない場合に主張する。

 ここで、商業的成功(Commercial Success)の具体例としては、以下の内容が挙げられる。

発明品のシェアまたはシェア増加のデータ
・内外国の企業からの引き合いやその実績

・実施許諾の実績
・業界紙などにおける評価

 手続上は、宣誓供述書に代えて宣言書(Declarationを提出することが許されている。
 Affadavitでは、アメリカ大使または領事による認証が必要となる。
 First Office Actionに対しては、指定期間(通常3ヵ月)内に答弁書を提出しなければならない。
First Office Action
に対する答弁書は、クレームの本質的な補正、または新しいクレームの提出のための唯一の機会
あるから充分に注意して作成すべきである。

12.2Final Office Action

 MPEP 706.07(a)によれば、出願人の補正に起因しない新たな拒絶が発見された場合(Bの場合)を除いて、
Second OA
Final OAとされる。
Final Office Action
Final Actionの分類
(a)出願の許可(Allowance
(b)クワイル事件型指令(Ex parte Quayle Action
 クレームは許可されることになったが、明細書または図面を一定期間のうちに補正することが要求される。
Final Office Action
Final Actionの分類
(c)一部のクレームについての許可と他のクレームについての最終拒絶
(d)全クレームについての最終拒絶(final rejection
 Final Actionの後の補正は、許可(Allowance)されるようにするため、または控訴(Appeals)するのに
都合よくするために行われる。

 引用文献に反駁、または出願人の主張を支持するために Affidavit Declarationを提出することもできるが、
審査官によっては、
Final Action後はAffidavit Declarationを見ない者もある

12.3Advisory Action
 Final Actionに対する応答の後、拒絶理由が克服されたと認める場合には特許をすべき旨の通知(Notice of Allowance
を、拒絶理由が克服されたと認められない場合は
Advisory Actionを発する。
 出願人は、 Final Actionに対する応答期限内6ヵ月(OA発送日から3ヵ月+延長3ヵ月)に、RCEなどの対応を
採らなければならない。

 Advisory Actionは、通常、補正(もしくは証拠)を受理するが、拒絶理由は克服されない旨を含んでいる。

12.4 Notice of Appeal
 また、Final OA後で、 Final OAに対するResponse提出期限内(OA発送日から3ヵ月+延長3ヵ月)であれば、
Notice of Appealを提出し、審判を請求することができる。
 審決に不服がある場合、連邦巡回控訴裁判所(CAFC: Court of Appeals for Federal Circuit)に提訴することができる。
 提訴できる期間は審決から2ヵ月以内である。
 審査の後、拒絶理由がなくなれば、出願人に許可通知(Notice of Allowanceが発せられる。
 許可通知から3ヵ月以内に特許料 (Issue Fee, $1330)を納付すれば、特許が付与される。この期間は延長することができない。
期間内に納付されなかったときは、出願は放棄されたものとされる。

 クレームが許可された理由が審査記録から客観的に明確でないと判断した場合、審査官は、 Notice of Allowanceとともに、
Reasons for allowance
を出願人に通知する。これは、その出願の他のクレームを拒絶するOAで、もしくは別の通知で出願人に
知らされる。

 Reasons for allowanceを受け取った出願人は、審査官が示したReasons for allowanceに異議がある場合には、指定された期間内に、
陳述書
(Statement)を提出することができる
 陳述書を提出しなければ、審査官の示した理由に同意したと推定される場合がある。
 しかし、提出された陳述書に対して審査官は応答する義務がないので、陳述書の内容がどのように扱われるかは裁量で行われる。
ただし、陳述書は、審査記録の一部として包袋に残る。

12.6Letters Patent
 Issue Feeが支払われると特許証が発行(毎週火曜日の正午)される。

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13 拒絶理由
新規性(Anticipation)に関する拒絶
102条(a)  国内公知公用、国内外刊行物記載
102条(b)  grace periodone year rule
102条(c)  発明の放棄
102条(d)  twelve months rule
102条(e)  先後願
102条(f)   冒認
102条(g)  先発明主義

自明性(Obviousness)に関する拒絶
103条    非自明性

13.1拒絶理由―新規性
102条(a)
 特許出願人による発明以前に、その発明が本邦において他人により知られもしくは用いられていた場合、
また本邦もしくは外国において特許されもしくは刊行物に記載されていた場合。

新規性の判断基準として、国内公知公用、国内外刊行物記載が原則
特許出願時ではなく、発明時を基準として判断

 原則として、米国外でなされた発明の新規性は、本条の規定に関わらず、現実の米国特許出願日
(優先権主張をともなう出願にあってはその優先日)を基準として判断される。

 ただし、1994年に§104が改正され、NAFTA及びWTO加盟国内でなされた発明についても
新規性の判断基準日として現実の発明日を主張できるようになった。

102条(b)one year rule
 合衆国における特許出願日より1年以上前にその発明が本邦または外国において特許されもしくは刊行物に記載されていた場合、
または本邦において公然と用いられもしくは販売されていた場合。

 たとえ、発明を完成した時点では新規性を有していた発明であっても、米国特許出願の日から1年以上前に米国の内外を問わず、
すでに特許されもしくは刊行物に記載されたとき、または米国内で公然使用もしくは販売されていたときは、
新規性を欠くものとして特許を受けることができない。


102条(c)
発明を放棄した場合。
〜発明を放棄したとされる場合〜

発明完成後特許出願することなく長期間に渡って発明を放置しておいた場合
発明者が発明についての権利を放棄する旨を意思表示した場合(たとえば、抵触審査の手続きにおいて
発明を放棄する旨の書面を提出した場合)

明細書で開示した発明をクレームすることなく放置しておいた場合

102条(c)

発明の放棄
いったん発明を放棄すると、特許取得は完全に不可能。

出願の放棄
出願を放棄しても、発明者が同一発明について再出願すれば、特許取得は可能。

102条(d)twelve months rule
 発明が外国において出願人またはその法定代理人もしくは承継人により合衆国における出願提出より
12ヵ月以上前に提出された出願に基づいて、合衆国における特許出願日より前に特許を与えられ、
または与えられる状態となったかあるいは発明者証の主題となっていた場合。


102条(e)
その発明が、
(1)特許出願人による発明以前に他人により本邦に出願され、本法§122(b)によって公開されるに
到った出願に記載されていた場合

(2)特許出願人による発明以前に他人により本邦に出願された特許出願に基づいて与えられた特許に記載されていた場合に
拒絶される。

 先行公報が、102条(e)項の先行公報として後願を排除することができる日を102条(e)の基準日という。







 PCT出願がアメリカで特許となった場合、102条(e)の先行技術としての効果を生ずる日は、
アメリカに「国内移行のための手数料、翻訳文、および発明者の宣誓書が提出された日」である。

 なお、英語で公開されたPCT出願に関しては、国際出願日が102条(e)の先行技術としての効果を生ずる日となる。

Milburn事件〜
「後願の発明が先願の明細書に開示されているときは、たとえ後願の特許出願当時、先願がいまだ特許されていなかったとしても、
先願は後願に対する引用文献となり得る。



Hilmer事件〜(Hilmer I 149 USPQ 480)
 Hilmer事件は、外国出願の優先権をともなうアメリカ出願が、競合する出願の特許性を否定する
先行技術として効果を生じる日は、外国出願の優先日であるべきか否か
の問題に関するものである。


 米国特許局(現USPTO)審判部(Board of Appeals)の判断を覆し、CCPAは、条約による優先権を主張し
特許されたものの先行技術となる日付は、優先日ではなく、現実にアメリカ特許出願がなされた日からであると判示した。



102(e)1999年の発明者保護法で改正され、2002年にさらに修正された。
改正
102(e)の適用基準日は20001129日であり、 20001129日後に出願、または20001129
現在係属中の出願に適用される。

102(e)の先願公報は、その出願日より後願排除効を有する。

102条(f)
特許を請求した発明の主題を自身で発明したのではない場合。

102条(g)
 特許出願人による発明よりも前に、その発明が本邦において、ほかの発明者によってなされており、
かつそれを放棄し、秘密にしまたは隠蔽しなかった場合。

 他人による発明のほうが先である場合、その発明が出願されているか否かに関わらず、また公知であるか否に関わらず、
特許を受けることができない。

 発明の後先を定めるためには、発明を考えついた日および実施に移した日が考慮される。
先に考えついたが実施化が遅かった者の場合、他人が考えつく前からのその者の努力も考慮される。

103条
 発明が本法§102に規定されているごとく、全く同一のものとして開示または記載されていない場合であっても、
特許を請求した発明の主題と既知の技術との間の差異がわずかで、その発明の主題が全体としてその技術分野における
通常の技術者にとってその発明のなされた時点で自明であるような場合には特許を受けることができない。
発明のなされた態様により特許を受ける適格性が否定されることはない。

 §102で規定する先行技術から容易に想到し得る程度の発明は、自明な発明として特許を受けることができず、
特許を受けるためには当該先行技術に対し構成、作用、効果の面で顕著な差異が認められるものでなければならない。

つぎのものは、一般的に自明な発明として拒絶される。

・公知技術の単なる寄せ集め

公知要素の単なる付加
構成要素の寸法の変更
構成要素の省略
構成要素と均等物との置換
材料の単なる置換

非自明性の判断はGraham testにより行なう。

Graham test
先行技術の範囲と内容を確認する。
先行技術と本願クレームとの差異を判断する。
発明当時の技術水準を勘案する。

13.2抵触審査

35 U.S.C.§135

 特許出願がほかの特許出願や特許と抵触する場合、抵触(Interferenceが宣言され、双方にその旨が通知される。
発明の優先性は、特許控訴抵触審査部(
Board of Patent Appeals and Interferencesにより決定される。
一方の出願人のクレームに対して不利な決定がされると、そのクレームは最終的に拒絶されたこととなり、
先発明者と決定された出願人に特許が与えられる。

 米国の特許法は、先発明主義をとっているため、異なる出願人が同一の発明についてそれぞれ特許出願をしていた場合には、
どちらが先に発明をしたかを決めなければならない。このための審査手続きを抵触審査手続き(
Interference Procedure
という。
抵触審査の手続は、
 1特許出願と特許出願
 2特許出願と特許
のあいだで行なわれる。
 両者ともすでに特許となっている場合には、再発行出願を行なうことにより、抵触審査に持ち込むことができる。
もちろん、裁判所でどちらが先発明者かを争ってもよい。

 抵触審査の手続きは、 2以上の者が実質的に同一の発明をクレームしている場合に行なわれる。
 実質的に同一とは、発明Aが発明Bと同一である場合(§102)のほか、発明Bから自明である場合(§103)も含まれる。
 抵触審査の手続きは、新規性、非自明性などすべての面で特許要件を具備すると判断された出願についてのみ行なわれる。
 たとえ抵触関係にある2以上の出願が存在したとしても、一方(あるいは両方)が特許要件を満たさないと判断される場合、
その出願は拒絶され、抵触審査は行なわれない。

 どちらが先に発明したかの審査は、USPTOの特許控訴抵触審査部(Board of Patent Appeals and Interferences,3名の
審査官によって構成)によって行なわれ、どちらに特許を受ける権利があるのか決定される。

抵触審査の手順(1)
1 抵触審査の宣言
抵触審査の対象(カウント)を設定
抵触する発明を包含するようカウントを設定
各クレームはいずれかのカウントに属する
カウントごとに先発明を争う
有効出願日にもとづき、シニアパーティー(先順位者)を仮定
立証責任がジュニアパーティ(後順位者)に課せられるので、シニアパーティは有利

抵触審査の手順(2)
2 陳述書および申立書の提出
書(Preliminary Statement
・カウントごとに、発明者を明らかにし、着想の日や実施化の日を主張する
書(Preliminary Motion
・相手方の特許性の否定
・抵触ではない旨の主張
・カウントの変更の要求                               など

抵触審査の手順(3)
3 証言手続
4 審理
5 審決
   → 不服があればCAFCに控訴

 勝者に特許が与えられ、勝者の明細書の開示事項は相手方に対し先行技術となる。
 敗者は、勝者の明細書に開示のない事項をクレームアップし、特許を受けることはできる。
発明完成の優先順位は、つぎの各要素に基づいて決定される。

1発明を着想した日date of conception
2発明を実施化(出願)した日date of reduction to practice
3発明者が発明を実施化することについていかに熱心であったか(diligence


<例1> 発明を着想した日、実施化した日がともに早かったとき

発明の実施化についての熱心さを問題とするまでもなく、出願人甲が先発明者となる。


<例2> 発明の着想が同時になされたとき

発明の実施化についての熱心さを問題とするまでもなく、出願人甲が先発明者となる。


<例3> 発明を先に着想したが、実施化が遅れたとき

 発明の着想から実施化に至るまでの間、出願人甲が熱心に実施化のための努力をした場合に限り、出願人甲は先発明者となる。

判例 Ginos et al v. Nedelec et al事件
事実関係

判例 Ginos et al v. Nedelec et al事件
事実関係
 フランスの出願の出願日(1975121 )に基づき、Nedelecがシニアパーティであり、GionsNedelec
有効出願日
1975121以前に着想があり、かつその日から実施まで勤勉であったことを裏付けるために証言
及び資料提出を行なった。

判決

判決
 NedelecGionsの実施化の日が1976.3.24(テスト日)であることは認めたが、着想日と勤勉性については争った。
 抵触審査部は、1975.11.13以前に着想があり、1976.3.24の実施化の日まで勤勉であったことを認め
発明の優先性を
Gions et alに与えた。

13.3重複特許(Double Patenting
Double patentingとは、同一人に対し、
1同一発明を2度特許してしまう場合
2自己の先願から自明な発明に特許を与えてしまう場合

自己の先願は 102(e)の先行技術に該当しないので、同一人の後願を拒絶できない

(a)出願人(発明者)が異なる場合
同一の発明について異なる出願人の出願が競合する場合
→ 102(e),(g)で拒絶 → Interference
(b)出願人(発明者)が同一場合
同一出願人から2件以上の出願がなされた場合
→ Double Patentingで拒絶 → Terminal Disclaimer
Double Patentingには同一発明型重複特許(same invention type double patenting)自明型重複特許
obviousness type double patentingがある。
 後者の場合は、terminal disclaimerを提出することによって特許を受けることができる。

(a)同一発明の場合
→ Double Patentingで特許されない。
(b)同一ではないがobviousである場合
      → Double Patentingが発せられても terminal disclaimerで回避できる。
(c)patentably distinctである場合
         問題なく特許される。
Terminal Disclaimerとは、権利存続期間の全部または一部を放棄するもので、特許権者または出願人がそれをすることができる。

AとBについて、権利期間の重複、延長がある。

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14 OAへの対応
14.1 答弁書
 Office Actionを受け取った場合、答弁書を提出しなければならない。
 答弁書では、各拒絶に対して充分に応答しなければならない。ある理由に対して応答しなければ、
出願放棄とみなされる場合がある。

 拒絶理由を克服するために宣誓供述書(Affidavit, Rule 1.132の提出が必要だと考える場合には、
最初の答弁書と同時に提出することが望ましい。
宣誓供述書は、つぎのような場合に使用できる。
引用文献に対して答弁する場合
発明の有用性を証明する場合
発明の商業的成功をもとに非自明性を主張する場合
 
 審査における二次的考慮事項としては、ロングフェルトニーズ(long felt needs)が最も一般的であるが、
商業的成功も同じく有効な手段である。

 商業的成功(Commercial Success)とは、米国の審査において非自明性の二次的考慮事項(secondary meaning
であり、発明の顕著な効果などで反論しても、審査官の判断が覆らない場合に主張できる。

 ここで、商業的成功(Commercial Success)の具体例としては、以下の内容が挙げられる。

発明品のシェアまたはシェア増加のデータ
内外国の企業からの引き合いやその実績
実施許諾の実績
業界紙などにおける評価

 手続上は、宣誓供述書に代えて宣言書(Declarationを提出することが許されている。
 Affadavitでは、アメリカ大使または領事による認証が必要となる。

14.2 審査官との面接
 また、First OAおよび(または)Final OAののちに審査官と面接(Interview)することを希望することができる。
 First OAに対する答弁書を提出するに先立って、または提出1週間後ぐらいに、審査官に対して面接を申込むのが望ましい。

・最も好ましくは
 予め作成した答弁書案を審査官との面接で示し、答弁書案または新しいクレームに対する審査官の反応を
知ってから答弁書を提出する。

 もしクレームの許可を得るために修正が必要とされるのであれば、これを答弁書の中へ盛込むことができ、
あるいは答弁補充書として提出することもできる。

 面接に先立って、出願人はその代理人に対し発明について充分な知識を与えておくべきである。
発明と先行技術との差異を明確に指摘し、さらに好ましくは、これを支持するような実験データもしくは
Affidavit
提供しておくべきである。

 また、クレームに必要ならどのような限定を加えたらよいか、どのような限定は加えてはならないかを指示しておくとよい。
 さらにまた、その発明が商業上現実に取りあげられ、クレームによってぜひとも保護したい有用な形態に関するできる
限りの知識を与えておくことが必要である。

 なおまた、審査官と折衝してクレームが許可されるために必要な訂正を行う権限を与えておくことも大切であろう。
 最初の答弁書を提出したあとで面接が行われた場合には、補充答弁書を面接後なるべく早い時期に作成し提出
しておくべきである。この補充答弁書を提出するのは、面接の際えられた合意に基づいて変更を行い、かつ面接のときに
審査官に対して行われた主張を要約して記載しておくためである。

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